雑記

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【ブルーバックス】逃走・闘争反応の脳科学【自律神経の科学】

参考図書

逃げるか、戦うか、それとも待つか

 動物は、さまざまな他の動物と対峙します。あるときには熊のような怖い動物であったり、あるときにはウサギのような可愛い動物であったり、その判断は瞬時になされるでしょう。そして、熊であれば心臓がどくどくと脈打ち、ウサギであれば心が安らぐかもしれません。それは反射的に起こる反応であり、自律神経が大いに活用された応答でもあります。  

 ここで、森の中の茂みで、何かの動物がガサゴソ音を出していたとしましょう。姿は見えず、その音から察するに熊よりも大きく、ウサギよりも大きそうです。とりあえずじっと待ち、その音に耳を澄ませます。そして、逃げるべきか、逃げずに戦うべきか考えることでしょう。大きな熊であれば逃げたほうがいいし、子熊であれば勝てそうです。とにかく、対象が何であれ、このような状況はストレスであります*1

ストレスに対処するには、①自らストレスの対処に立ち向かう(Fight:闘争)か、②その対象からいち早く逃れる(Flight:逃走)か、あるいはじっと待つか(Freeze:すくみ)か、などがあります。(自律神経の科学、p.129)

 本書ではさらに以下のように自律神経との関係が説明されます。①闘争と②逃走はどちらも積極的な行動であり、交感神経の非常に強い活動があります。一方、③すくみは消極的な反応であり、副交感神経の強い活動があります。

 ここで疑問が多く浮かびます。まず、これらの応答の初期の判断は脳でどのようになされているのかという判別の問題。次に、判断がなされた後で、交感神経または副交感神経の神経伝達はどこから始まり、どのように流れるのかという神経解剖的な疑問。また、闘争と逃走時は全く別物の応答であるが、交感神経応答は同じであるのか。

 ここでは、解剖学的に調べてみたいと思います。手がかりとして、ブルーバックスでは次のような記述がありました。ストレス時にストレス応答を誘発できる脳部位は、視床下部や脳幹にあるとされています。例えば、脳幹の中脳には交感神経を強める場所と弱める場所が発見されており、それぞれ①闘争②逃走反応と③すくみ反応に通じると考えられているようです。

自律神経の上位中枢

 ストレス応答を誘発できる部位として視床下部が挙げられていた。視床下部は多くの神経核*2から構成されている。その中でも、第三脳室の傍らにある神経核である室傍核(PVN:Paraventricular Nucleus)に自律神経の上位中枢がある。

PVN には脳幹や脊髄の自律神経節前ニューロンの細胞体に軸索を投射するプレ自律性ニューロンが存在しており,自律神経系の上位中枢として機能している.*3

 室傍核のプレ自立性ニューロンから、弧束核(nucleus tractus solitarii / solitary nucleus)や caudal ventrolateral medulla へ投射する*4

 

さいごに

ちょっと飽きたのでまた今度書きます。

*1:書いていて思ったのですが、すくみ応答というのは対象が不明である状況に限られるのではないでしょうか?対象が見えていたりして(あるいは音で)明確であれば、逃げるか戦うかすればいいと思えるからです。実際に有名な実験系で、マウスに音を提示した後に電気ショックを与えて、恐怖を学習づけるとすくみ応答を起こすということがあります。これは対象が明らかでないからではないでしょうか?あるいは逃げ場がないからすくんでいるだけなのか。三つの応答が果たして同列に考えられるのかは疑問です。実際に、逃走か闘争かと二種類の応答として考えている生理学者もいます。

*2:神経細胞の細胞体が集まる部分。ちなみに細胞体が集まる脳部位は肉眼で灰色に見えることから灰白質と呼ばれる。一方、細胞体以外の軸索などからなる部分は白く見えることから白質と呼ばれる。軸索を取り巻くミエリン鞘は白い脂質を多く含むため白く見える。

*3:視床下部:自律神経系と神経内分泌系の統合中枢」https://www.jstage.jst.go.jp/article/ans/59/2/59_165/_pdf/-char/ja

*4:これらが既に自律神経の節前神経と考えてもいいのだろうか?