- 第1章 脳の情報処理システム
- 第2章 「こころ」と情動
- 第3章 情動をあやつり、表現する脳
- 第4章 情動を見る・測る
- 第5章 海馬と扁桃体
- 第6章 おそるべき報酬系
- 第7章 「こころ」を動かす物質とホルモン
- 終章 「こころ」とは何か
第1章 脳の情報処理システム
第2章 「こころ」と情動
うれしいこともストレスの一種
ストレスというと悪いもののようにとらえられがちだが、ストレス応答はポジティブな情動でも起こる。うれしいこともストレスの一種なのだ。なお、ヒトでは主な糖質コルチコイドは「コルチゾール」と呼ばれる物質である。p.48
恐怖も喜びも心拍数の上昇、呼吸数の上昇、発汗を引き起こす。だけれども、恐怖と喜びが異なる感情であることは自明のように思える。恐怖を感じればそれから遠ざかろうとするし、喜びを感じればそれに近づこうとすることからも行動的に明らかだ。では、心拍数の上昇のように、恐怖と喜びを分けるために重要な身体的な情報をデータとして取るならば、それは何だろう?*1
第3章 情動をあやつり、表現する脳
感覚情報がたどる二つの経路
感覚系からの情報は、嗅覚を除き、大部分が視床を経由して、大脳皮質で処理されている。
たとえば視覚は、眼球の網膜から視神経を経て、視床の一部である外側膝状体に伝えられる。ここでシナプスを介して神経細胞を乗り換え、後頭葉の一次視覚野に伝えられる。
聴覚も、やはり視床の一部である内側膝状体というところに伝えられ、そこでシナプスを介して神経細胞を乗り換えて、側頭葉の一次聴覚野に伝えられる。
触覚や音痛覚も同様だ。これら皮膚からの情報は、脊髄で処理されたあと、おもに脊髄視床路という視床を介して師匠に伝えられたのちに、シナプスを介して頭頂葉の一次体性感覚野に伝えられる。p.97
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目や耳などの身体の抹消から感覚情報は、まず視床に送られる。次に大脳皮質に送られる一方で、大脳辺縁系にも送られるという。そもそも進化的には大脳辺縁系の方が古く、我々人間で大脳皮質が新しく発達したのである。大脳辺縁系には、海馬や扁桃体が含まれる。
目からの感覚情報の場合、視覚から大脳皮質へ送られた情報は、明るさや色(周波数特性)、コントラスト、傾き、そして動きなどの成分、言わば単なる詳細情報として処理されると考えられている。一方、大脳辺縁系へ送られた情報は、「危険かどうか」などの情動を生み出すと考えられている。前者の正確な情報が、少し遅れて後者に届き、応答を修正すると考えられている。つまり、前者を理性、後者を本能と呼べば、理性が本能を制御するしくみである。
・二つの経路に送られる情報は、同じか異なるか?
・大脳皮質で処理された情報は、どのように辺縁系に影響するのか?
第4章 情動を見る・測る
第5章 海馬と扁桃体
海馬体、海馬の構造
海馬は大脳辺縁系にある「海馬体(Hippocampal Formation)」と呼ばれる構造の一部であり、海馬体は海馬のほかに歯状回(Dentate Gyrus)、海馬支脚(海馬台)、前海馬支脚、傍海馬支脚、嗅内皮質などを含む構造体である。(中略)
海馬には錐体細胞、歯状回には顆粒細胞と呼ばれる、グルタミン酸を神経伝達物質とする神経細胞が存在する。(中略)
海馬は層構造になっていて、CA1、CA2、CA3の各部位からなる。基本的には、CA3の錐体細胞が歯状回からの入力を受け、CA1、CA2の錐体細胞に出力している。さらにCA1、CA2の錐体細胞は海馬台に出力を送る。p.146
海馬体への三つの入力
- 貫通線維(Perforant pathway)
貫通繊維は、側頭葉の大脳皮質の一部分の嗅内皮質からの入力経路であり、おもに大脳皮質からの記憶するべき情報を伝えていると考えられている。大脳皮質連合野で分析された種々の情報は、嗅内皮質からの貫通線維を通って海馬体に入る。p.148
嗅内皮質(Enthorinal cortex)
- 脳弓(Fornix)
脳弓は、内側中隔核、乳頭体上核、青斑核、縫線核という領域からの入力経路である。これらの入力は、生体の状況に応じて海馬の機能を調節している。状況によって記憶の強さが異なるのは、この機能による。
- 腹側海馬交連(Commissura fornicis ventralis)
腹側海馬交連は、反対側の海馬および歯状回からの入力であり、左右の情報を統合する働きがあると考えられる。