目的のない勉強会

主にブルーバックスをまとめています

【ブルーバックス】「複雑系」入門

【記事作成中】随時、追加していきます。

今回読んだ本

注目の切り抜き

ローレンツによるカオスの発見:ロジスティック写像(第二章)

 MITで気象学の教授だったエドワード・ローレンツは、気象の複雑さを削ぎ落としてシンプルなトイ・モデルを立てた。これは微分方程式であり、その時間発展と解を数値的に求めるために、彼は当時の計算速度の遅いコンピュータを使った。コンピュータが計算をしているあいだ、彼はゆっくりとコーヒーでも飲んでいた。初期条件を与えて何回か計算をするのだが、彼は二度目の結果が一度目と全く異なることに気がついた。原因は初期条件の小数点以下の方を面倒くさいから省略したことにあった。初期条件のわずかなズレが時間発展にしたがって予期せぬ挙動を示すことからカオスと呼ばれた。しかも、ローレンツが発見したこの現象は、決定論的な法則に従う体系の中で発見された非決定論的なカオスであった。
 カオス的な振る舞いをする微分方程式は、現在では力学系という分野で紹介される。力学系はもともと、閉じられた環境内に生息して一年で卵を残しながら死んでいく儚い虫の数を表現するモデルとして考えられた。本書にはそれが紹介されている。ある年の虫の数が  xであったとき、次の年の数を  ax(1-x) で表現するというものである。  a は任意の係数であるが、この値が変わることで解の振る舞いが変わる。具体的には、およそ  a=3 を境にして、それ以下であれば一つの値に収束する一方で、それより大きくしていくと解が振動する。しかも、振動の周期が 2, 4, 8, 16, ... と増えていき、やがてカオスになる。その振動の波が折り返す  x の値を縦軸に、係数  a を横軸に取ると、よく見るロジスティック写像のグラフが描かれる

ロジスティック写像を知らない方はこちら。蜘蛛の巣みたいな図です。 ja.wikipedia.org